人体の約60%は水分でできています。たとえば体重60kgの人の場合、体の水分量は約36kgです。そして、人の体からは呼吸や汗、尿などにより毎日約2.5リットルの水分が失われています。この失われた水分を補うため、失われたのと同じ量の水分を毎日補給する必要があります(参考:厚生労働省健康情報サイト)。
ただ、毎日補給する水分が、糖分や添加物が多く含まれている飲みものだと、アトピーを悪化させてしまいます。なぜなら血液やリンパの働きは体の水分と関係しているからです。
たとえば血液には酸素や栄養素、老廃物を運ぶなど、生命を維持するうえで重要な働きがあります。血液の成分は半分以上が血漿(けっしょう)とよばれる液体で、血漿のほとんど(90%以上)は水分でできています。
一方リンパは体内の余分な水分を回収しながら、水分に含まれている老廃物やウィルスなど有害な物質を分解し浄化する働きがあります。
血液やリンパはどちらも栄養を運んだり老廃物を排せつしたりする大切な役割があります。もしそれらの働きを弱めてしまう飲みもので水分を補うと、アトピーを悪化させる原因となります。
そこで、このページではアトピーを悪化させる飲みものと、その理由について紹介します。
Contents
糖分の多い清涼飲料水
糖分が多く含まれている飲みものはアトピーを悪化させます。糖分を分解するとき、皮膚の成長や免疫機能の維持など、皮膚にとって大切な役割があるビタミンBが大量に消費されてしまい、その結果体内のビタミンBが不足して、皮膚を健康に保つことができなくなるからです。
たとえばコーラやサイダー、スポーツドリンクには、それほど強い甘みを感じないかもしれませんが、思いのほか多くの糖分が入っています。
飲みものの場合、商品パッケージに表示されている「炭水化物」の数値で糖分の量を知ることができます。炭水化物は糖質と食物繊維の合計を表していますが、一般に清涼飲料水の多くは食物繊維がほとんど含まれていないため、炭水化物量=糖質(糖分)量とみなされます。
たとえば、500 ml入りのコーラに炭水化物が11.3g(100mlあたり)と表示されていたとしたら、含まれている糖分は11.3g×5=56.5gです。
そしてコーラに含まれている糖分の数値を、角砂糖(1個=3.5g)であらわすと約16個分になります。ほかにもサイダーなどの炭酸飲料はペットボトル1本あたり角砂糖におきかえると10~16個分、スポーツ飲料は6~9個分の糖分がふくまれています。
このように商品によっては驚くほどの糖分量が含まれているのです。
WHO(世界保健機関:世界の人々の健康を守るため国際的に活動している専門機関)は、健康維持のために1日あたりの糖分摂取量を小さじ6杯程度(25g)までに制限することを勧めています。
先ほどのコーラ(500 ml)には糖分が50g以上含まれていますので、1本飲むだけでWHOが勧める一日あたりの糖分摂取量を軽く超えることになります。
私はアトピーだった頃、飲みものがアトピーに関係するとは全く意識していませんでした。糖分が多く含まれている炭酸飲料を毎日ペットボトル2本くらい飲み、ケーキやチョコレートなどのスイーツも制限なく食べていました。このような生活習慣は糖分の摂りすぎになり、やがてアトピーの悪化につながります。
ある皮膚科の専門病院が、アトピー患者(成人)を対象に食生活を調査した結果によると、アトピーの人はコーヒー飲料を習慣的に飲むなど、食生活において糖分を多く摂りたがる傾向があると報告されています。
そして、この病院の報告に限らず、多くの皮膚科専門医は、糖分の取り過ぎはアトピーを悪化させる要因の一つであり、控えることが大切であると指摘しています。
では、なぜ糖分の取り過ぎは、アトピーを悪化させるのでしょうか。
砂糖を消化するときには、ビタミンB群とよばれる8種類のビタミン栄養素がたくさん必要となります。そのため砂糖を摂りすぎると体内にあるビタミンB群が使われて、身体はビタミンB不足となります。
ビタミンB群は皮膚にとって大切な役割を持っています。
たとえばビタミンB2は皮膚を健康に保つ働き、ビタミンB6は皮膚の成長を促進し、免疫機能を維持する働きがあります。
実際、ビタミンB2とビタミンB6は皮膚炎の治療に対して薬と共に活用されており、アトピーの改善に、とても重要な栄養素だということがわかります。
ところが糖分が多く含まれている飲みものを飲みすぎると、ビタミンB群は糖分の分解にたくさん使われてしまい体内から不足します。つまり糖分の分解のためにビタミンB群が消費され、皮膚の成長促進、免疫機能の維持に必要となる量を維持できないのです。これではアトピーを悪化させるばかりです。
このような理由で、アトピーのある人は、糖分が多く含まれている甘い飲みもので水分補給するのは控えるべきです。
アルコール
アルコールを摂りすぎると臓器への負担が増し、その結果アトピーの悪化につながってしまいます。
アルコールを分解するために臓器への負担が増し、アトピーの改善にとって必須の働きである「不要なものを身体の外へ出す力」が弱まってしまうからです。
不要なものを体の外へ出す力が弱まると、体内に残る有害物質や不要物の量が増えていきます。
たとえば肝臓は身体に取り込まれた有害物質を、解毒や分解によって無害化する働きがあります。また腎臓には血液から有害物質を取り除き、それを尿として排せつする働きがあります。通常、人間の身体から有害物質や不要物を体外に出す働きは、主に肝臓と腎臓が担っています。
ところがアルコールを摂りすぎると、肝臓や腎臓の働きが低下してしまいます。すると体内には排せつされない有害物質や不要物が、残ってしまうことになります。
常に身体は不要なものを排出しようと働きますが、その間にもアルコールを摂りつづけていれば、有害物質や不要物が解毒・分解されないまま身体にドンドン溜まっていくことになります。
有害物質や不要物が排せつされないまま身体に溜まり続けていくことは、健康を損なうだけにとどまらず、最悪の場合には生命を維持することが難しくなる恐れも出てきます。そのため身体は何とかして有害物質や不要物を外に出そうと懸命に働き始めます。その一つが皮膚から有害物質や不要物を出そうとする働きです。
しかし皮膚には有害物質を解毒・分解する力は備わっていません。そのため皮膚は無防備な状態で、有害物質や不要物を体外に出す役目を負うことになります。それがアトピーを引き起こしたり悪化したりすることにつながってしまうのです。
アトピーの症状は皮膚にあらわれますが、その原因は臓器の働きが低下し、体内に有害なもの、不要なものが溜まっていくことに関係します。
私は毎日のように飲んでいたアルコールをやめ、食事や水分補給に気を配る食生活を実践し、身体全体が健康になっていくことでアトピーが改善されました。多くの臓器に負担がかかり、有害物質や不要物が排せつされず溜まってしまうことにつながるアルコールは、アトピーを悪化させてしまいます。
食品添加物が多く含まれる飲みもの
食品添加物が多く含まれている飲みものは、アトピーを悪化させる恐れがあります。たとえば、ノンアルコール飲料、カロリーゼロ飲料、チューハイ、カクテル飲料には多くの添加物が含まれています。
食品添加物は身体にとってアトピー悪化につながる「不要な物質」です。人には、身体にとって不要なものや有害な物質が入ってきたとき、それを身体の外へ出そうとする働きが備わっています。しかし不要な物質の量が多くなりすぎると、それを体外へ排出する働きが追いつかなくなります。その結果、身体は不要な物質が溜まっていく状態になってしまうのです。
これは「ゴミの量が多く、捨てる作業が追い付かず、ゴミがどんどん増えていく状態」のようなものです。食品添加物など体にとって不要な物質の蓄積がアトピーを引き起こす原因の一つだと考えられています。
ノンアルコール飲料、カロリーゼロ飲料、チューハイ、カクテル飲料は食品添加物が多く使われやすい飲みものです。
たとえばノンアルコール飲料をビールのような見た目や味にするのにカラメル色素や香料、酸味料などの食品添加物が加えられています。また甘味がありながらカロリーゼロという飲みものをつくるためには、人工甘味料が不可欠です。人工甘味料も身体にとっては不要な食品添加物です。その他にもチューハイ、カクテル飲料には、さまざまな味と香りを持たせるために香料や酸味料をはじめとする多くの食品添加物が使われます。
こうした飲みものに含まれる食品添加物の量をそれほど多いと感じず、アトピーへの影響は少ないと思うかもしれません。しかし食品添加物の中には一日に摂取できる量(一日摂取許容量)を定めている種類があり、意識しないでいると簡単に許容量を超えてしまいます。
たとえば一日の摂取許容量が定められている例として「アセスルファムK」という食品添加物(人口甘味料)があります。アセスルファムKは甘みが砂糖の約200倍あり、尚かつカロリーがゼロの物質です。「低カロリー」「カロリーゼロ」と表記されているノンアルコール、チューハイ、カクテル飲料など多くの飲みもので使われています。
この「アセスルファムK」には一日に摂取しても問題ないとされる量が定められており、体重50kgの人の場合は、飲みものに換算すると約1.5リットル(※)です。
(※)この量は、飲みものに使用可能な最大限度(使用基準)のアセスルファムKが含まれている場合の計算値です。
もし使用基準量のアセスルファムKが含まれている350ml入りの缶チューハイを3本飲めば、約1リットル飲んだことになります。アセスルファムKは飲みものだけでなく、漬けもの、肉の加工食品、おつまみ珍味、ガム、チョコレートなど多くの食品に幅広く使われている食品添加物です。このため、飲みものと一緒に食べたおつまみやチョコレートにアセスルファムKが含まれていたとしたら、1日の摂取許容量を軽く超えてしまうのです。
アトピーを悪化させないためには、「不要なものをできるだけ体内に入れない」という意識が大切です。まして身体に危険が伴う可能性があり、摂取してもよい量に制限が定められている物質は、避ける方が安心です。
「ノンアルコール」や「カロリーゼロ」といった表示は、なんとなく健康に良さそうだとイメージをもつかもしれません。しかし、実際には身体にとって不要な食品添加物を多く含んでいることがよくあります。
アトピーのある人は、「なんとなく体に良さそうだから」という理由ではなく、体にとって不要なものができるだけ含まれていない飲みものを選びましょう。
理想は「水」で水分補給
水分を補給するのであれば、身体にとって理想は「水」です。水には糖分もアルコールも食品添加物も一切含まれていません。体への負担が全くない飲みものです。
水で適切な水分補給をすることによって、血液やリンパの流れが良くなり、体内に溜まった老廃物や不要な物質を汗や尿として排出する力が高まります。
また水分補給を水で行うことは、血液によって酸素や栄養素が身体の隅々に運ばれる働きを高めます。
糖分や添加物、アルコールなどが含まれている飲みものでは、このような働きを高めることができないだけでなく、むしろ低下させてしまいます。水分補給は水がおすすめです。
まとめ
アトピーをケアするには、症状が出ている部分だけではなく、体全体を健康にしていくという考え方が大事です。そのためには飲みものにも気を配り、アトピーを悪化させない取り組みが必要です。
アトピーを悪化させないために控えるべき飲みものとして
- 糖分の多い清涼飲料水
- アルコール
- 食品添加物が多く含まれる飲みもの(ノンアルコール飲料、カロリーゼロ飲料、チューハイ、カクテル飲料)
を取りあげました。
これらは毎日の水分補給には適していない飲みものですので、気をつけましょう。