アトピー症状があるとき、水素水を利用すると良いのか迷うことがあると思います。
水素水が健康に良いのかどうかについては、はっきりしていません。水素水の効果を科学的に証明する根拠や信頼できるデータが十分ではないからです。
また、人の体内には「水素ガスを発生する自然の仕組み」が備わっています。水素を体内に取り入れるために、わざわざ水素水を飲まなくても良いのです。
ここでは「アトピー改善のために水素水を飲むか迷っているときに、知っておくべきこと」を紹介します。
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水素水とは何か
水素水は、人工的に水へ水素を入れた水です。
水素は地球上で最も多く存在している自然な気体(ガス)で、においも味もありません。
水素ガスはロケットや自動車の燃料といったエネルギー分野、石油製品の製造や金属、ガラス加工といった工業分野などを中心に、さまざまな分野で利用されています。
そして水素水に入っている水素は、こうした分野で利用されているものと同じです。
なぜ水素水が注目されるようになったのか
2007年に日本医科大学の太田成男教授が、「水素は健康に良い」という論文を発表して、世界的に注目を集めました。
その後2015年にテレビの健康番組で、「水素を入れたお風呂でアトピーが改善した人の体験談」が紹介されました。番組の最後では「水素水のアトピー性皮膚炎に対する効果は、現段階では解明されていない」と表示されましたが、放映をきっかけにして一気に水素水ブームが起こりました。
水素水は清涼飲料水
水素水は「清涼飲料水」に分類されます。清涼飲料水に分類されている他の飲み物には、たとえばジュース、缶コーヒー、スポーツ飲料などがあります。
水素水はこれらの清涼飲料水と同じ分類のため、たとえ健康に良さそうに思えても、公的に健康食品として認められた飲み物ではありません。
公的な健康食品とは「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」のように、「健康に役立つことが科学的に証明された」として国から認められた食品です。
たとえばトクホや機能性表示食品として認められると、「血圧に効果がある」「体に脂肪がつきにくくなる」といった、健康に効果があることを製品ラベルや広告で表示できるようになります。
水素水は、こうした公的な健康食品として認められていません。
冒頭で紹介したように、水素水の効果を証明できるだけの科学的な根拠や信頼できるデータが十分ではないからです。水素水はあくまで清涼飲料水なのです。
水素水の安全性は未確認
水素水の安全性については、まだはっきりと確認されていません。しかし人によっては、「水素は食品添加物として認められているから安全」と思うかもしれません。
たしかに水素は「製造用剤(せいぞうようざい)」として使う場合に限って、厚生労働省から食品添加物として認められています。
製造用剤とは、「食品を加工する途中で使われる食品添加物」のことです。製造用剤は完成した食品に残らないか、残ってもごくわずかであることが条件です。つまり水素そのものを大量に摂ることへの安全性は、まだ確認できていないのです。
たとえば水素が製造用剤として使われている例に、マーガリンがあります。マーガリンは原料となる油に水素を添加して作られています。
マーガリンに水素が添加されても、原材料に「水素」と表示されることはありません。完成したマーガリンに水素が残らないからです。
一方で水素水は原材料名に「水・水素」と表示されており、必ず水素が入っています。つまり水素が食品に残っている状態です。
前述したように、食品添加物として水素の安全性が認められているのは、食品に水素が残らない使われ方をしたときだけです。
水素が食品添加物として認められていることを理由に水素水の安全性を紹介していても、それは正確なことを伝えていないのです。
水素水の効果は、はっきりしていない
医療の分野で、水素が新しい治療法(先進医療)として期待されているのは事実です。実際に医療現場では、水素ガスを患者の治療に利用するための試験や研究が行われています。
水素が医療分野で使われ始めているため、「水素が入った水素水も、アトピーに効果があるのでは?」と思うかもしれません。
しかし医療現場でも、水素に効果があるとは断定できていません。
水素は病気の治療に役立つ可能性はあるものの、はっきりと効果があると科学的に証明されるには、まだ多くの臨床試験や研究が必要なのです。
水素水を飲まなくても、人の体には水素ガスが発生する自然の仕組みがある
もし水素にアトピー症状を和らげるような作用があるとしても、水素水を飲む必要はありません。人には「食事をすると腸の中に存在している細菌が働いて、水素ガスが発生する」という、体の自然な仕組みがあるからです。
食品を調査している国立健康・栄養研究所は、「水素水の効果を判断するときには、体内で作られている水素の量も考慮すべき」と報告しています。
たとえば体内に存在する水素の量を測ったとき、それは水素水を飲んだからではなく、食事によって自然発生した結果かもしれません。食事によって発生する水素ガスの量は、想像以上に多いのです。
体内で発生する水素ガスの量は人によって異なりますが、食物繊維を多く摂っているほど多くなることが分かっています。
そして水素ガスが体内でたくさん発生する人は健康的な体質である可能性が高く、それについて研究している医師もいます。
つまり体内の水素ガスを増やすには、食物繊維がたっぷり含まれた健康的な食事をすれば良いのです。
アトピーが治りやすい体質を作るには、生まれながら備わっている体の自然治癒力を高めることが大切です。私自身、食生活を改善してアトピーが治りました。
そうした経験から水素水を飲むよりも、きれいな水を飲んだり健康的な食事を心がけたりすることをおすすめします。
まとめ
ここでは「アトピー治療のために水素水を飲むか迷っているときに知っておくべきこと」を紹介しました。
水素水は清涼飲料水であり、健康食品として認められたものではありません。
また水素水の効果や水素を大量に摂ることの安全性も、はっきりしていません。
もともと人の体は、食事をすると水素ガスが発生するようになっています。
そのためアトピーには水素水を飲むよりも、一般的なミネラルウォーターを飲んだり、健康的な食事をしたりすることをおすすめします。