アトピーで「かゆみ」に悩まされている人は多いと思います。
アトピーでかゆみのある部分を掻くと、皮膚は傷つき炎症を起こします。すると炎症によって皮膚はますますかゆくなり、もっと掻きたくなります。掻くことは皮膚の炎症を強め、アトピーを悪化させてしまいます。
そのため「皮膚をできるだけ掻かないようにしながら」、「皮膚が回復しやすい状態を作り出す」ことがアトピーを改善するために必要です。
ここでは「かゆみの仕組み」について解説したあと、「かゆみを抑えて皮膚を回復しやすくする方法」について紹介します。
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かゆみは皮膚を異物から守る、体の自然な反応
かゆみは皮膚に不要なものや異物があれば、それを掻いて払うために知らせてくれる「本能の感覚」といわれています。
たとえば虫や異物が皮膚についたとき、かゆみが起きれば思わず掻きます。すると皮膚についた虫や異物が払い落されます。つまりかゆみによって、皮膚は外からの刺激(この場合は虫や異物)から守られたことになります。
アトピーの人は皮膚を守る「バリア機能」が弱まっています。そのため外からの刺激を受けやすく、炎症が起こりやすくなっています。外からの刺激や異物は皮膚にとって不要なものなので、体は本能に従ってかゆみを引き起こし、異物を取り除こうと働いてしまいます。
また「アレルギー物質」や「食品添加物」などの有害物質が体内に入ったときには、人の体は有害なものを外へ出すために血管を広げて、血液の流れを増やします。かゆみはこのときにも起こります。かゆみは体から有害なものを出すために生じるので、有害なものがなければ反応しなくなります。
このようにかゆみは「体に不要なもの、有害なものがあると、それをとり除いてほしいと訴える体の反応」です。逆の言い方をすれば、皮膚や体にとって不要なものがある限り、かゆみは起きます。かゆみは体の「自然な反応」といえるのです。
掻くと脳が喜ぶ仕組みがあるため、かゆみは治まりにくい
アトピーに限らず「かゆい部分を掻くと気持ち良い」という感覚は、誰もが経験していると思います。掻くと気持ち良く感じる仕組みには「脳」が関係しています。
脳には「欲求が満たされると、気持ちよく感じる神経」があります。この神経は「脳内報酬系(のうないほうしゅうけい)」と呼ばれ、これが刺激されると気持ち良い感覚が生じます。
たとえば人の「喉がかわいて水を飲む」「甘いものを食べる」「人から褒められる」などの行動は、脳内報酬系が刺激されることによって、人が気持ちよくなる例です。
そして実は「かゆい部分を掻く」ことも脳内報酬系を刺激することが、大学共同利用機関 生理学研究所(NIPS)の研究によって分かっています。つまり脳には「甘いものを食べる」のと同じく、「かゆい部分を掻く」ことで、気持ちが良くなる仕組みがあるのです。
さらに脳内報酬系は「気持ち良い感覚を何度でも味わいたい」という欲求が湧いて、さらに強く刺激を求めるようになります。かゆいところを掻くと、もっと掻きたくなるのはそのためです。
脳内報酬系への刺激は、強まって度を越すと依存症につながります。この点についてかゆみに詳しい皮膚科専門医の菊池 新(きくちあらた)医師は、「長年アトピーになっている人は、「掻いて快感を得ることを、体と脳が覚えてしまっている場合」がある。そしてかゆくない時でも快感を求めて無意識に搔いてしまい、症状を悪化させて治らないことを繰り返してしまう」と解説しています。
このようにかゆみは皮膚そのものだけでなく、脳の仕組みも関係しています。かゆみが治まりにくいのは、こうした複雑な理由があるからです。
かゆみが強まる原因と対策方法
アトピーでかゆみが強まる原因は、大きく分けて次の4つがあります。
食べもの・飲みもの
辛いもの、香辛料を多く使った刺激の強い料理、脂肪の多い食べもの、チョコレート、アルコール、糖分の多く含まれた食べもの・飲みものは、「かゆみを強める原因」として、多くの医師が控えるように指導しています。
アトピーを改善したい場合、かゆみが強まる原因となりそうなものは、食べたり飲んだりすることを控えるか、完全に止めることをおすすめします。
日用品
石けん、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤、化粧品などは、化学成分が主成分のものがあります。化学成分が皮膚に付くと、かゆみの原因になりやすいです。これらは日常的に使うものなので、できるだけ皮膚に刺激の少ない「天然成分や自然由来の成分」で作られた製品を選ぶことが大切です。
衣類
衣類は材質によってかゆみにつながることがあります。
たとえば化学繊維(ナイロン、ポリエステル、アクリルなど)は、皮膚が刺激されやすい素材です。これらの繊維が使われている服を着ないようにするか、直接肌に触れないように注意しましょう。特に「肌着」は皮膚に直接触れるので、化学繊維が使われていないものを選ぶよう気をつけましょう。
また、化学繊維ではありませんが、「ウール素材(羊の毛)を使った衣類」はチクチクして皮膚を刺激するため、アトピーの人は避けたほうがよいです。皮膚への刺激が少ないおすすめの素材は、「綿100%」です。
ストレス
かゆみが強まる原因として「ストレス」もあります。仕事や人間関係、受験や子育てなど、何らかのストレスによって、かゆみが強まることが医学的な研究によって明らかにされています。
日頃の生活を送る中で、できるだけストレスをためないように心掛けましょう。「ストレスがたまってきた」と感じるときには、家族や友人と出かけたり、周りの人に相談したりすると良いです。また、「自分が楽しいと感じること」をすることでもストレス発散につながります。スポーツやカラオケ、ショッピングなど、何でも良いので自分がリラックスできることを定期的に行うようにしましょう。
以上のように、かゆみの原因は、人ぞれぞれで異なります。「自分はどのようなときにかゆみが強まるか」を観察してみましょう。そして原因となりそうなもの見つけて、それらを避けていくことがかゆみを防ぐために大切です。
まとめ
ここでは「かゆみの仕組み」と「かゆみの原因・対策方法」について紹介してきました。
かゆみは異物が皮膚についたとき、それをとり除いてほしいという体の自然な反応です。しかしかゆい部分を掻くと「脳内報酬系」と呼ばれる脳の神経が気持ち良くなり、刺激を求めてもっと掻きたくなります。
かゆみの仕組みと原因を知ることで、体を掻きたくなったときに対策をしやすくなります。アトピーによるかゆみを防ぐために、紹介した4つの原因のうち、どれが自分に当てはまっているかを振り返りましょう。そして、それに合せた対策をするようにしましょう。