海水浴でアトピーの症状が良くなった経験のある人がいます。
アトピー症状が海水浴で良くなる理由は、「海水の塩分が細菌の繁殖を抑える」「海水のミネラルが保湿力を高める」「紫外線が皮膚の過剰反応を抑える」といった作用が考えられています。
しかし反対に海水浴によって、症状が悪化する人もいます。
ここでは「海水浴でアトピーが良くなる理由」と、「アトピーで海水浴をするときの注意点」について紹介します。
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人によっては海水浴で、アトピー症状を和らげることができる
人によっては海水浴をすることで、アトピーの症状を和らげることができます。しかし別の言い方をすれば、アトピーを持つすべての人が、海水浴で良くなるわけではありません。反対に症状が悪くなる人もいます。
たとえばアレルギー専門の皮膚科医が、700名以上の患者を対象に行ったアンケートでは、アトピー症状がある人の約70%が「海水浴でアトピーが良くなった」と回答しています。しかし反対に「海水浴で悪化した」という人は、10人に1人以上いました。
このように海水浴で症状が悪くなる人がいることや、海水浴の効果について、まだ科学的に証明されていない部分があることから、医師によってはアトピーの人に海水浴を禁止する場合があります。
しかし海水浴が、アトピーの改善に役立った例があることは事実です。そのため「人によっては海水浴をすることで、アトピー症状を和らげることができる」といえます。
海水浴でアトピー症状が抑えられる理由
海水浴でアトピーの症状が抑えられる理由は、主に4つあります。
1.海水に含まれる塩分の作用で、アトピー症状のかゆみや炎症が抑えられる
海水浴には、細菌の増殖を抑える作用があります。その理由は「海水に含まれている塩分によって、アトピーの皮膚に多い『黄色ブドウ球菌(おうしょくぶとうきゅうきん)』の活動が抑えられるため」です。
黄色ブドウ球菌は「常在菌(じょうざいきん)」と呼ばれる細菌の一種です。常在菌は人の体内に存在する細菌で、皮膚が健康な状態であれば問題になることはありません。
しかし皮膚に湿疹ができたり、掻いて傷ついたりすると、黄色ブドウ球菌は水泡や膿(うみ)を作り出します。そして、強いかゆみや炎症を引き起こします。
アトピーが悪化している皮膚には、黄色ブドウ球菌が極端に多くなっていることがわかっています。そうした皮膚に役立つのが海水浴です。海水浴をすることによって黄色ブドウ球菌が減り、アトピー症状を抑えることができるのです。
人によっては「海水浴ではなく塩水を使ったときでも、同じようにアトピー改善の効果はあるのだろうか」と思うかもしれません。
自然の塩を使って海水に近い濃度にした塩水であれば、アトピー改善の効果が期待できます。しかし海水浴のほうが、より効果のあることが分かっています。
2.ミネラルの作用で「皮膚の若返り」や「保湿・保温力」が高まる
海水にはミネラルが含まれています。ミネラルは皮膚の若返りに役立ちます。皮膚が若返ると皮膚を再生させる力が高まります。
ミネラルとは「カルシウム」「マグネシウム」「亜鉛」など、人の体を健康に保つ重要な働きを持っている栄養素です。
特にカリウム、マグネシウム、カルシウムをとると細胞が活性化して、皮膚が生まれ変わりやすくなります。
海水にはこれらのミネラルがバランスよく含まれています。そして海水浴をすると、皮膚を通して豊富なミネラルを体内に取り入れることができます。
また海水のミネラルには、皮膚の保温力や保湿力を高める作用があります。ミネラルが皮膚の細胞と結びつくことで、皮膚の表面に薄い膜ができるためです。
皮膚の保湿・保温効果が高まると、皮膚のバリア機能(外部からの刺激や雑菌から皮膚を守ったり、乾燥を防いだりする働き)が強まり、アトピー症状が改善されます。
3.紫外線の作用で、刺激に対する皮膚の過剰な反応が抑えられる
海水浴で日光(紫外線)に当たると、皮膚の過剰な反応が抑えられます。
人にはウィルスや細菌といった異物から体を守る「免疫機能」が備わっています。外から有害な物質が体に入り込もうとするとき、免疫機能の働きによって皮膚は異物を追い出そうとします。
ところがアトピーでは、健康な人であれば問題がない物質に対しても、免疫機能が過剰に反応することがあります。そのためアトピーの人は健康な人に比べて、皮膚のかゆみや炎症が起こりやすくなってしまうのです。
紫外線には、こうした免疫機能の過剰な反応を抑える働きがあります。そのため紫外線が皮膚に当たると、小さな異物に対して、免疫機能があまり反応しなくなるのです。
しかし体質的に紫外線が合わない人もいます。日光に当たってじんましんや湿疹、水泡、かゆみが出たときには、紫外線アレルギーの可能性があります。海水浴でこれらの症状が出たときは、必ず医師に相談しましょう。
また「自分は紫外線に弱い」と感じる場合は、海水浴を控えてください。
4.海水浴によるストレス解消がアトピー症状を抑える
海水浴は楽しいものです。海へ出かけることでストレス解消になり、アトピー症状を軽減するために役立ちます。
アトピーとストレスには、深い関係があります。ストレスが強くなると、アトピーは悪化します。
アトピーの症状によるかゆみや炎症があることで、強いストレスを感じることは多いです。そのため日ごろからストレス解消を意識して、アトピー症状を抑えることが大切です。
アトピーの場合に海水浴をするときの注意点
海水浴はアトピー症状を和げる効果がある一方で、長時間泳いだり日光に当たり続けたりするなど無理をすると、反対に症状が悪くなる恐れがあります。
海水浴でアトピー症状を悪化させないために、次のことに気をつけましょう。
- 日光が強い時間帯(9時から夕方4時ころまで)は海水浴を避ける。
- 強い日差しに皮膚をさらさないように注意する。対策として「上半身にTシャツを着る」「バスタオルや濡れタオルを体にかける」などを心がける。
- 掻き傷や化膿によって皮膚がただれている場合は、海水浴を控える。
- 海水浴の後は、しっかりと体を休める。
私はアトピーだったとき、海水浴で症状が軽くなった経験があります。しかし海水浴はあくまでアトピー症状を抑える可能性の一つです。そのため症状が治まったとしても、その間にアトピーの原因を無くしたり、食生活や生活習慣を見直したりなど、根本的なアトピー改善に取り組むことが大切です。
まとめ
ここでは「海水浴でアトピーが良くなる理由」と、「アトピーの人が海水浴をするときの注意点」について紹介してきました。
海水浴をすることで、アトピー症状の改善が期待できます。
ただその一方で、海水浴が合わない人の場合、症状が悪化してしまう可能性があります。
アトピーの人は皮膚に負担をかけないように、無理のないように海水浴を楽しんでください。