「季節の変わり目」はアトピーの症状が悪化しやすい時期です。冬から春にかけて、あるいは秋から冬にかけての時期に、症状が悪化しやすいです。
季節の変わり目になるとアトピーが悪化することには、「自律神経」という神経が関係しています。季節の変わり目は自律神経の乱れにつながりやすく、その結果、アトピーの症状にも影響を与えます。
ここでは「自律神経や季節の変わり目とアトピー症状の関係」と、この時期におすすめ対策方法を4つご紹介します。
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アトピー症状にかかわる「自律神経」
はじめに「自律神経」について説明します。自律神経は「心臓や消化器官の働き」、「体温の調節」、「血液の循環」といった体の重要な機能をコントロールしている神経です。自律神経は交感神経と副交感神経からできています。交感神経は、血圧を上げたり心臓の動きを早めたりすることで、体を活発に活動できるようにします。副交感神経は、身体をリラックスさせたり眠気を誘ったりすることで、体を休ませる活動をする神経です。
自律神経は私たちの意思とは関係なく、休むことなく働きます。たとえば寝ているとき、私たちは自分で意識しなくても呼吸をしたり、心臓を動かしたりしています。また物を食べたときには、胃や腸はすぐに消化を始めます。自分で「胃や腸を動かそう」と考えることはありません。
自律神経は自分の命を保つうえで欠かせない神経です。そして自律神経は、アトピーの症状にも深く関わっています。
たとえば「皮膚」から汗を出す「汗腺(かんせん)」は、自律神経の「交感神経」と関連しています。ストレスが多いときや緊張しているときなどは「交感神経」が過剰に働きます。そして、汗を多くかいたり吹き出物ができたりします。反対に交感神経の働きが弱まると、汗は出にくくなり、肌は乾燥します。
また「肝臓」も自律神経によって管理されています。「肝臓」は食べ物や薬など、体内に取り込んだ栄養分などを分解したり、体内に貯めたりします。
さらに自律神経は「免疫機能」にも関係しています。免疫機能は細菌やウィルス、ほこり、アレルギー物質など体にとって有害なものが入ろうとしたときに、それを防いだり外へ追い出したりする働きです。
そのため免疫機能が低下すると風邪をひいたり傷が治りにくくなったりします。また免疫機能は過敏になり過ぎることもあります。するといつもは気にならない刺激にも強く反応して、アトピーの症状である炎症やかゆみを引き起こすことにつながります。
このように自律神経には体に欠かすことのできない重要な役割がたくさんあります。
季節の変わり目にアトピーの症状が悪化しやすいのは、自律神経の乱れが原因
「自律神経の乱れ」とは、たとえば暑くないのに大量の汗をかく、眠気はあるのに眠れないなど、自律神経が体の機能を正しくコントロールできなくなることです。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、その関係は公園にあるシーソーにたとえることができます。シーソーの片方が「交感神経」、もう一方が「副交感神経」の関係で、傾くことなく両方のバランスが保たれている状態が理想です。
ところが季節の変わり目になると、このバランスが崩れやすくなります。そして交感神経と副交感神経の、どちらか一方の働きが強くなってしまいます。これには季節の変わり目に多い「寒暖の差」が関係しています。
たとえば寒いときには「交感神経」が働きます。交感神経は身体を活発にさせるために働きます。交感神経の働きによって体内で血管が縮まり、体を流れる血液の量が減ります。これにより温かい血液の熱が皮膚から逃げにくくなり、体は冷えから守られます。ただし血圧が上がるので首や肩のコリ、疲労が生じやすくなります。
一方暖かいときは、副交感神経の働きが強まります。副交感神経は身体をリラックスさせる働きがあります。副交感神経によって血管が広がり、血液の流れが良くなります。これによって血圧が下がり、身体がリラックスして眠くなることもあります。
季節が移り変わる時期は、暖かい日と寒い日が交互に繰り返されます。そのためこうした交感神経と副交感神経の働きがひんぱんに切り替えられます。
自律神経は、気候にすぐ適応できるわけではありません。寒暖の差が激しいと、自律神経は乱れて、交感神経と副交感神経を正しく切り替えられなくなります。さらに、アトピーに深く関係がある「免疫機能」のコントロールも正しくできなくなります。そしてその結果、アトピーの症状を悪化させてしまうのです。
私は毎年春の暖かい時期になると、湿疹(しっしん)やかゆみなどのアトピー症状が出てくることがあります。このときは、私は生活習慣を見直すようにしています。生活を正すようにすると、アトピーが悪化することなく、自然に引くようになりました(写真参照)。
気候が大きく変わる時期は快適に過ごすことが難しく、体に負担がかかりやすい時期です。しかしできるだけ自律神経のバランスを保ち、少しでもアトピーを悪化させないことが大切です。次からは自律神経のバランスを保つための対策として、4つの方法を紹介します。
「季節の変わり目」にアトピー症状を悪化させない4つの対策
対策1.睡眠を十分にとる
睡眠は脳や体の疲れを取る効果があります。睡眠中には「成長ホルモン」という成分が体内でたくさん作られます。成長ホルモンは、細胞の修復や再生、筋肉の発達、疲労回復、肌の若返り、免疫力を高めるなどにつながる大切な成分です。
睡眠不足になると体を回復させることができないだけでなく、成長ホルモンが分泌されません。そして成長ホルモンの分泌をコントロールしているのが自律神経です。
睡眠不足によって成長ホルモンの分泌が減ると昼間でも眠気を誘うなどして、体は少しでも体を回復させようとします。このとき昼寝をすると、夜になって寝つきが悪くなることもありますし、逆に眠いのを我慢して活動を続けると疲労がたまってしまいます。これが自律神経の乱れにつながります。
成長ホルモンは細胞の修復や再生、肌の若返りといったアトピーの回復には欠かせません。体をしっかり回復させるためにも、季節の変わり目には特に睡眠を十分に取ることをおすすめします。
仕事などで生活が忙しいと、つい睡眠時間は短くなりがちです。ですが生活を改善すると、睡眠時間を長く取ることができます。
たとえば「ネットサーフィンをする」、「SNS(Facebookなど、インターネットでのコミュニケーションサービス)を見る」、「ダラダラとお酒を飲む」、「ゲームに熱中する」などは、つい時間が経つのを忘れて夢中になりがちです。
アトピーを悪化させないためには、睡眠時間を減らす習慣をやめて、睡眠時間を確保しましょう。
対策2.質の良い食事を心がける
アトピーの改善のためには、「質の良い食事」をとることが大切です。質の良い食事とは、「外食や加工食品(レトルト食品や冷凍食品、パックのお惣菜など)に頼ることなく、野菜や魚など、新鮮な食材を使った手料理を食べること」です。
外食や加工食品は便利ですが、どうしても添加物や油、砂糖を多く含みます。野菜やフルーツであれば体内の「消化」時間は短く、体への負担は少なくてすみます。しかし特に添加物は体に不要な物質で、体内では消化だけでなく「解毒」や「分解」が必要となります。つまり添加物をたくさんとると、体への負担が増してしまうのです。
また油を取り過ぎると肌の油分が増えて、湿疹(しっしん)やかゆみを引き起こす原因になります。
こうしたことを防ぐためにも面倒かもしれませんが、できるだけ手作りの料理を食べることが大切です。
料理に使う食材は、「季節」を意識して取り入れるのがおすすめです。季節に合った「旬の食材」は新鮮で栄養分がたくさん含まれており、健康に良い効果が期待できるからです。
季節に合った食材として、たとえば春には「山菜」がおすすめです。山菜には老廃物を排出させる作用があります。冬は身体の代謝が悪くなり、体内に老廃物がたまってしまいがちです。そのため、山菜をとることで溜め込んだものを排出することができます。
また、トマト、きゅうり、スイカのような「夏野菜」や「夏の果物」には、水分や栄養素を補い、体温を下げる効果があります。
また「秋の味覚」といわれるサツマイモは胃腸の働きを整え、きのこは疲労回復を補うなど、夏の暑さで疲れた体の回復に役立ちます。さらに大根、ニンジン、白菜、ネギなどの「冬の食材」は、体を温める、免疫力を上げる、皮膚・粘膜を丈夫にする作用があります。
このように添加物や油など、体への負担がかかるものを避け、季節に合った食材を取り入れた料理を心がけましょう。質の良い食事にこだわることで、アトピーを悪化させにくくさせます。
対策3.軽い運動をする
軽い運動は心身をリラックスさせ、自律神経を整えてくれます。疲労回復にもつながり、血流や「栄養を運んだり老廃物を排せつしたりする」リンパの流れを良くする効果が期待できます。
軽い運動の例は「ウォーキング」、「ジョギング(会話が出来る程度の小走りで良い)」、「サイクリング」、「ストレッチ」などです。
ただ、たとえ軽い運動であっても体を動かすことが習慣になっていないと、運動するのは気が進まないものです。このときには手軽に行える方法で、日常生活に運動を取り入れることができます。
バスを使わず歩いたり、エレベーターやエスカレーターを使わず階段を使ったりすると良いです。また、電車やバスで座らずに立つ、帰宅ルートを変えて少し遠回りするなどの方法も効果的です。
ほかにも「料理」や「掃除」も良い運動になります。たとえば厚生省が発表している生活習慣病予防のガイドラインによると、「料理の準備や皿洗い」は、「ストレッチングやヨガ」とほぼ同じエネルギー消費になります。また「掃除機がけ」にも「ウォーキング」と同じだけのエネルギー消費量があります。
ほかにも子どもと一緒に歩いたり走ったりして活発に遊んだときは、同じ時間ゴルフや野球をしたときと同じくらいのエネルギーを消費します。
このように工夫することで、生活の中で運動するのと同じ効果を得ることができるのです。また、より本格的に運動したい場合は、スポーツジムなどを検討するのもおすすめです。
運動が習慣になっていないときは、まずは生活の中で気軽に取り組めることから始めてみてください。
対策4.お風呂では湯船につかる
お風呂はシャワーだけですませるのではなく、湯船につかるとアトピー改善に効果的です。
湯船につかると体温が上がります。その結果、血流やリンパの流れが良くなり、体の老廃物を外へ出す働きが高まります。またお風呂につかるのはリラックス効果があるため、自律神経を安定させるにも役立ちます。
アトピーの人は「低体温(体温が35℃台)」の傾向があります。低体温の状態では、血液の循環が悪くなり、体を細菌やウィルスなど有害なものから防ぐ免疫機能も下がります。また、低体温が続くことで自律神経も乱れやすくなり、アトピーがさらに悪化しやすい体質になっています。
私自身、アトピーがひどい時期は体温が35℃ぐらいでした。そのころは湯船につかるのが面倒で、シャワーですますことがよくありました。そのためいつも疲労感が抜けず、冬になると足が氷のように冷たくなっていました。
その後、私はアトピーの改善に取り組むようになり、お風呂では湯船につかるように心がけました。その結果、今では平熱が36℃台になり、アトピーも冷え性も解消しています。
季節の変わり目には急激な寒暖の差で、思わぬ冷えを招くことがあります。なるべく湯船につかるように意識しましょう。
まとめ
ここでは、季節の変わり目と自律神経がアトピーにどのように関係するかを紹介しました。また、季節の変わり目に効果的な4つのアトピー対策法も紹介しました。
- 対策1.睡眠を十分にとる
- 対策2.質の良い食事を心がける
- 対策3.軽い運動をする
- 対策4.お風呂では湯船につかる
アトピーが悪化する仕組みを理解して、きちんと対策をするようにしましょう。私は上記の対策をできることからひとつずつ行い、アトピーを改善することができました。今回紹介した方法を、ぜひ参考にしてください。